ジーハ村のやり方
「ね、ねぇカミナ」
「おうよ?どうしたってんだヨーコ」
「本当にジーハ村では、アレが日常なの?」
ヨーコが指を向ける方向には、身体の汚れを取っているシモンの姿があった。どうやらヨーコには、その
方法が信じられねえらしい。
「変か?」
「変じゃないけど、その……目のやり場が…」
汚れを取る方法。
ブタモグラに、身体を舐めてもらう。
「確かにあの姿は卑猥な感じするよな」
「言わないでよぉおおおっ!!!」
面白い程に顔を赤く染めるヨーコを後目に、俺はシモンの方へと目をやった。
上着を脱いでいる今、何時も以上に露わになった上半身が輝いて見える。
その肌に、ブータの舌が這う。
艶めかしい。
良い目の保養じゃねえか。
「良い光景だよなぁ」
「あんたそれでも、シモンの兄貴分なの!?」
「俺だってジーハ村に居た時はブタモグラの世話になってたんだからな」
「そそそっそっ、そういう事を言わないでよぉおおっ!!」
村によって常識が異なるのは分かるが、そこまで恥ずかしがる事だろうか。俺にゃあよく分からねえが、まぁ
これが俺達の日常なんだ、俺まで恥ずかしがる事はねえな。
またシモンの方へと顔を向けたら、上着を脇に抱えながらラガンへと向かっていた。
何をするのか想像が付いたので、少しちょっかいを出してやろうと俺もシモンの後を追う。
「カミナっ!?」
「俺もブータに汚れ落としてもらうわ、覗くなよ!」
「覗かないわよっ!!」
ヨーコに面倒な事を言われたら面倒だ、手を振りながら俺は足早に駆けた。
グレンから少し離れた所にあるラガンに追いつくと、案の定ハッチが閉まっていた。
外からじゃあ見えねえが、中からは俺の様子が見えてんだろうな。
シモンに向かって、歯を出して笑った。
ガツン。
何かがぶつかる音がして、急にハッチが開いた。
「ア…アニキ、どうしたのっ!?」
頭を撫でながら驚いた顔を向ける所を見ると、顔を覗かせた俺に驚いた拍子に頭をぶつけたらしい。
「上半身は終わったんだろ?」
「みっ、みみ…っみみみ見てたのっ!?」
「続き見に来た、偶には弟分の成長っぷりを確かめようと思ってな」
「要らない要らない!そんな確かめ要らないからっ!」
上半身の汚れが落ちたなら、次はその下だ。
朝の戦いでは生身で土を掘らなきゃならなかったし、そのせいで足も随分汚れてたと思う。
シモン本人が外でブータと居た時は、足の汚れに気が付かなかったんだろうな。ふと足の汚れに気付いて、一人
になれるラガンに来た……そうに違いない。
弟分の考えが分かるなんて、流石俺。
流石はアニキ分だ。
「ブータに舐めてもらうんだろーが………下も」
「アニキぃいいいぃぃぃぃいいいぃいぃいいいーーーーいいいい!!」
ふとシモンの腰を見るとベルトが外れていたから、これからブータに頼む所だったんだろう。
泥はシモンの股の方まで浸食しているらしく、ズボンも随分汚れていた。
こいつは脱がねえと汚れは落とせねえ。
「い、いくらアニキでも……これだけは駄目!」
堪んねえ。
上目使いで、尚かつ涙目……これに反応しない訳がねえ。
しかしまぁ、本気で嫌がってるシモンに無理意地する気はねえんだ。お巫山戯も度を超す前に切り上げよう。
「分かったよ、ほれ……ハッチ閉めな」
ラガンとの距離を少し空けると、シモンは妙に頬を膨れさせながらハッチを閉めた。
怒ってんだか、恥ずかしがってんだか……多分後者だろうな。シモンも馬鹿じゃねえ、俺の
冗談に気が付いてやがるだろう。
「シモン……待ってるぞ」
ラガンの前に座り込むと、そのまま中にいるシモンへと目線を送った。
ブータと一緒に居るシモンは。
ラガンの中で。
俺の事を。
見ているだろうか。
下半身を清めながら。
「……俺も性格悪ぃな」
シモンには冗談だと思ってもらわなきゃ、困る。
気付かれちゃあ、困る。
だけどこうする事で。
シモンが。
少しでも。
「俺を意識してくれりゃあ良いんだがな」
ブタモグラに汚れを舐め取ってもらうという設定は、色々と妄想に拍車を掛けてくれる、
素晴らしい設定だと思います!
2007,07,17
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