再会と別れ
「行け、シモン。
もしとか、たらとか、ればとか……そんな想いに惑わされんな。自分の選んだ一つの事が、お前の
宇宙の真実だ」
「……嗚呼、そうだな。その通りだ」
「忘れんな、俺の宇宙もソコにある宇宙だ」
暖かな、アニキの指が俺の胸に触れる。たった一本の指が触れただけなのに、胸が張り裂けてしまいそうな程に
嬉しい。それでいて気持ちは晴れやかで、どんな事態にも対応出来そうな程に落ち着いていた。
後ろに居る皆も俺を優しく見守ってくれている、これで安心しない訳がない。
するとアニキが俺を上から下まで眺めるので、何だか恥ずかしくなってしまった。
成長した俺の姿を、アニキが観察してくれている。
それは今までやってもらいたくても、適わなかった事。
「いつの間にか背ぇ抜かれちまったな」
「ほんとだ……ふっ、ははははっ…!」
七年ぶり、七年ぶりの……アニキとの会話。
この七年間をアニキに話したい、聞いてもらいた。そんな欲に駆られそうになる程、アニキとの時間は
至福の瞬間だ。それでも、俺にはやらなければならない事がある。
もう、終わりにしなければ。
「……行くよ、アニキ」
「ああ。今度こそ、ほんとにアバヨだ……行けよ、兄弟」
違うよ、アニキ。
俺は自分の胸に親指を向けた。
「あばよじゃねえ……一緒だろ」
「……ああ!」
アニキの意志、仲間の意志、俺の意志、全ての想い。皆の全てを預かって、そして皆に全てを預けている。
散っていった仲間だって……俺の胸に、この胸に、一つになって生き続けるんだ。
皆が、俺を見送ってくれる。
何時か俺も其処へ行く時がやって来るだろう。それまで俺はこっちで頑張るから、どうかこの姿を
見守っていて欲しい。
皆に、背を向けた。
これでもう彼らと対話をする機会は無く、姿形で言うならば真の別れを迎えたんだ。
それでもこの胸には皆が一緒に居て、俺に力を与えてくれる。
コアドリルを握りしめると、緑色の光が輝いた。
「行くぜ、ダチ公!」
不謹慎かとは思うけど、アニキとまたこうして話が出来たんだ。少しくらい多元時空に捕らわれるのも、
良いものだと感じてしまう。
あれは神聖な神シーンでした……涙が止まりません…!!
2007,09,23
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